以前から気になって私なりににじり寄っていた好きな人に 告白する前に拒否された。 罵倒することも軽蔑することもできず ただ呆然と電話を撫でていた。 あまり撫でていて いちにちがおわってしまいそうになったので 商店街を闊歩してみた。 闊歩していると気分がよく …
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2015年10月
耳たぶ
『そりゃ、なんてったって うつくしいんだ、とても。』 汗ばみながら、彼は話す。 ツチ、キヌタ、アブミ骨。 耳のなかに存在している、ちいさなちいさな宝物。 わたしはうまくのみこみきれずにいたけれど、 彼の世界へと迷い込んでしまう。 そうして、い …
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山口さん
貴方の事が好きなんですよ。 頭の中で山口さんが言うので 私は多分、山口さんを好きになった。 しかし大変なことに現実の山口さんには子どもがいて もっと大変なことに私は山口さんの娘だった。 1人娘だから大事にしなくては と 山口さんは娘さんに赤い靴を買っていた …
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昼ごろ目覚めると、隣に丸いものがいた。 そっとなでると、柔らかな産毛が生えている。 大きな桃のような風体。 鼻を近づけると、赤子のような匂い。 「かわいいね」 と声をかけると、ふるふるっと震えて消えた。 また会いたい。 …
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